好きなお話をメモ代わりに書き留めておく場所


童話ばかり読んでいたから
馬鹿になったのか、馬鹿だから童話しか読まなかったのか。
一時期はアンドレ・ジッドも、夏目漱石も、アンダスンもモームも読みました。   
しかし、その重い世界と現実感に押しつぶされて負けてしまいました。       

ミステリー好きだった頃は、ホームズもポアロもミス・マープルも読みました。   
楽しかったけれど、本を大切にとっておくような気持ちにはなりませんでした。   

赤毛のアンも読みましたが、あまりの優等生ぶりに自分との落差にみじめさがつのって
本を開かなくなりました。                           

読んで嬉しくなったり、優しい気持ちになったり、自分は自分のままでも良い事がある
かもしれない、と小さな灯りをくれる童話が最後に残りました。
          


おへそがえる ごん〈1〉ぽんこつやまのぽんたとこんたの巻 赤羽 末吉

いくつもの絵本の挿絵を描いた赤羽末吉さんの最高傑作だと思います。
シリーズ3作全てを、きちんと元の横長のサイズで復刊して欲しいです。
古い本を、友人の勧めで図書館でかりてからすっかり忘れられなくなった本です。
長い間、日本画を描いていた筆者の暖かな筆使いを感じられる、大人にも子供にも強力お薦めの一冊。


カノン かんの ゆうこ 作・北見 葉胡 絵

大人にも子供にも見て欲しい読んで欲しい 。
不思議なお話は、挿絵の完成度とともにすっと入って来ます 。
子供はきっと無邪気な心でその不思議さを堪能し、大人はなくしてしまった何かを思い出したり。
この美しい一冊はきっと生活に色をくれる。

 

もも子・ぼくの妹 星 あかり 作・石倉 欣二 絵

双子の兄と妹。そのお兄ちゃんがお話する妹の物語です。未熟児で生まれ、しかしお兄ちゃんは元気に、妹は次第に病気になっていきます。障害を持つ家族を当然のとことして受け入れ素直に強く生きる子供の、真っすぐな姿。自分のことを卑下するにはあまりに幼い妹の一生懸命な愛らしい姿。彼らの生活を分かりやすくつづっています。小学2年の息子もすぐ読む事のできた大きな字でルビの振ってある本です。
主人公は小学3年から4年になる時期のお話。その時期の子供さん、その親ごさん、障害を持つ子のいるクラスのお子さん、3月にお誕生日のあるお子さん、兄妹の人、他にも沢山の人達に読んで欲しいです。


やまのかいしゃ スズキ コージ (著), 片山 健

ふと日常から外れているパラドックス。
それがのんきな山だったら・・・そんな誰もが持つ願望を美しい色彩とパワフルな筆使いで描き上げた傑作。
大切な一冊になります。


どこどこどこ(いってきまーす)  長谷川 義史 作・絵

絵探し絵本です。しかし、絵の元気さ完成度、面白さ、どれをとっても感動します。小さいお子さんから大人の人まで、誰でも見て欲しい、元気の出る絵本です!


タマリンとポチロー 北見葉胡 作・絵

不思議な不思議なタマリンとポチローと一緒になぞなぞをしたりする楽しい絵本・・・それだけではないのです。この絵本の素晴らしい所は、子供があ見て読んで楽しく、大人が見てもシュールできちんと書き込まれた丁寧な絵は、心のうきうきするような別世界の夢を見せてくれます。小さな子から大人まで、誰にでも手に取って欲しい本です。奇々怪々な動物や植物達と楽しい夢をみられそうです。

エマおばあちゃん ウェンディ・ケッセルマン 文、バーバラ・クーニー 絵、ももきかずこ 訳

年とったエマおばあちゃんの所に年何回か子供や孫が集まってきます。それ以外はごく静かに過ごしているおばあちゃんの隠れた画才の素晴らしさ!思わずグランマ・モ−ゼスという実在の希有な大器晩成の天才的な画家を思い浮かべてしまいます。エマおばあちゃんの自然な姿、絵を描く事を愛している様子、子供や孫達がそれを褒めて一緒に喜ぶ様子。幸せになれる一冊です。分も暖かく素敵ですが、絵と文が寄り添って心地よいです。

すりすりももんちゃん とよたかずひこ 文絵

暖かく優しい線と色で、かわいいやわらかな赤ちゃんのももんちゃんを描く作者。その愛らしさに自分の子供を重ねたり、強大を重ねたり、知り合いのお子さんを重ねてみて下さい。このシリーズが何冊かありますが、すりすりももんちゃんが一番好きです!柔らかですべすべの、ももんちゃんのほっぺに皆触りたがります。さてさてどうなるかな?ももんちゃんの可愛さを満喫できます。

ごろはちだいみょうじん 中川正 文、 梶山 俊夫 絵

幼稚園の時か、普及版の、表紙の固くない薄い本で買ってもらった中で、忘れられない一冊です。またこれも挿絵がとても良いんです。お話も大好きですが、子どもにとっては最後は悲しく涙を流してしまいます。どことなく、ごんぎつねに似た話ではありますが、ごろはちは関西弁で語られるので(しかもタヌキだし)またひと味違った渋めの終わり方をします。色合いが温かでありながら渋く、日本画の良さを存分に味わえる筆使いです。

きかんしゃやえもん 阿川弘之 文、 岡部 冬彦 絵

東京の交通博物館の売店で買った本です。やえもんが博物館にやって来るまでのいきさつを書いています。ユーモラスで温かな挿絵と古い機関車やえもんが、変わって行く時代に取り残されてしまった寂しさ、それでも優しくしてくれる人達のことをいやみなく、あたたかく読ませてくれます。小さいけど大事な本です。

ちいさいおうち  バージニア・リー・バートン 文 絵、 石井桃子 訳

あまりにも有名な本で、長い間わざと避けていた向きがありました。しかし手に取れば、ちいさなおうちの可愛さ素敵さに引き込まれてしまいました。町の光に憧れていたちいさなおうち。いざ周囲が町になってしまうととても悲しい思いをします。自分では動けないところに悲しさがあります。でもね、ちゃんと幸せなラストが待ってます。ほがらかな絵も堪能して欲しいです。

百まいのきもの エリノア・エスティーズ 文、 石井桃子 訳、 ルイス・スロボドキン 絵

小さな女の子の小さな意地と見栄が、いじらしく愛おしい。それを見守るもう一人の心優しい女の子。良くわかる表現で、何も気負わずに、なにが大切なのかを考えさせてくれました。挿絵も筆のタッチが美しい虹のような印象の残る秀作です。

トムは真夜中の庭で フォリパ・ピアス 作、高杉一郎 訳、スーザン・アインツィッヒ 絵

このお話は、私の中の「童話」の範囲よりちょっと長いのです。そして、ちょっとした伏線があらゆるところに張り巡らされ、最後に向かっての素敵な仕上げをお手伝いしています。そのラストをお話しすると、楽しみは半減するから書きませんけれど、最後まで読めば誰でもがなんとも言えない幸福と夢を感じるに違いありません。モノクロームの線画で描かれた個性的なタッチのどちらかと言えば写実的な挿絵、最初は抵抗があったのですがおしまいまで読むうちに「このお話にはこの絵しかないな」と思えるようになりました。1975年に第一刷している古い本で、もう手に入るのかどうかも分かりませんが、図書館にはある可能性は高いです。

おおきな木 シェル・シルヴァスタイン作&絵

ぼくと大きな木のお話。曲線の美しい挿絵で軽快に見せて行く少年の成長。人ってなんて勝手なんだろう。自然はなんて優しいんだろう。そのあまりの優しさに涙が落ちます。

東京からきた女の子 長崎源之助(著)

マサルという主人公と、転校して来たユカのお話。ぜんぜん可愛くもないやせっぽちのユカは自分の事を良く見せようとウソばかりつきます。それは彼女の寂しさの裏返しであることを、マサルだけは遂に分かるのですが・・・。
転校生のイメージと反対な転校生ユカとマサルの心が一瞬通い合う、はかない切ない思い出。瑞々しく学校や放課後の子ども世界を描いて時間が経っても新鮮な香りの消えない本。いくつになっても胸が痛くなるお話です。

ねこのき 長田弘さく、大橋歩 え

一人暮らしのおばあさんのねこのお話。短く少ない言葉。どこか長新太を思わせる大橋さんの大らかであったかな絵のコラボレーションが素晴らしい本。きっと一度読んだら側におきたくなります。
美しい色彩は見事で明るく、冷たくなった心を埋めてくれると思います。不思議なお話だけど、こんなことが本当にあればどんなに素敵でしょう! 明るい気持ちでいられるように、まだ目のよく見えない頃から赤ちゃんのベビーベッドに、真ん中の黄色っぽいページをいつも開いて置いてました。

台所のマリア様 ルーマー ゴッデン (著)

子どもらしくない、どちらかと言えば利己的なグレゴリーという少年。彼が人の為に何かをしようと思った時から、彼の周りは冒険と研究と温かな思いに包まれていきます。自分のことより誰かの為に何かする事の喜びを歌ったお話だと思います。お話の結びも温かでとても好き。体中に熱く血が巡るような感覚になるラストです。
子どもはいつもお家に居てくれる人を一番好きになるんだろうな、と、再確認した本でもあります。私も生まれてから中学二年まで一緒だった祖父母が最も好きな人だったから。共働きの両親には本当に申し訳ないのですが、暖かい思い出はほとんどが祖父母とのものだったからです。

そこなし森の話 佐藤さとる (著)

この著者はコロボックル物語が有名な方です。それも好きで良く読みましたが、最後まで心に残ったのは、この童話集です。10編の短編童話から成る一冊で、どのお話もふぃと日常に不思議がかくれているような、偶然に魔法に出会ってしまうような錯覚を起こさせるお話です。中でも最後の一遍にあたる「ネムリコの話」が好きで、何度も何度も読みました。熱に浮かされた経験の多くが、このお話の中に現れます。「ノンちゃん雲にのる」という別の筆者の話の中や、谷内六郎の描く世界の中にも、熱に浮かされている「感じ」が随所に出て来ますが、ネムリコは最も不思議でした。そして少し怖かった。

きいちゃん 山元加津子 (著)

きいちゃんが頑張るお話です。何度読んでも涙が止まらず、しかし元気が出てくる本です。大好きなお姉さんのために、障害を持ったきいちゃんができること・・・。きいちゃんは実在の人で、筆者は養護学校の教員です。まるで着物や千代紙を思い起こさせるような装丁が、明るく無邪気で、本をめくるたびに暖かさが伝わるようです。重い題材ながら、悲壮感が全くないし、さらっと読める簡潔で少ない字数。元気が足りないとき「自分なんて」と思う瞬間に読みたい本。

星の牧場 庄野英二 (著)

戦争から帰ってから「気が狂った」と周囲に思われているモミイチという青年が主人公です。全編に渡って感じられる草や木の存在、淡々と和やかに流れる時間が心地よい作品です。彼の愛馬ツキスミとの幻想にも似たふれあい、山間に住むジプシー達との夢のような出会い。愛想の良いだけの冷たい人が増えて来た日本で、何が自分にとって大切かを知って打ち込めるモミイチは、不器用だけれど大変すてきな人。戦争で負った心の傷から、持ち前の素直な心で静かに生きていく事の素晴らしさを思い出して行く、再生の物語だと思います。
ひょうひょうとした挿絵が、素朴なモミイチそのもののようでした。

白いおうむの森 童話集 安房 直子 (著)

この物語の集まりは、まるで突然見つけた小さな野の花の原っぱのようです。こんなに大切で愛おしい本は、なかなか出てきません。簡略化された優しい語り口。しかし甘えのない時には厳しいお話の最後もあるのです。
子供達には、小さな頃にはお話の含む全てが分からないかも知れません。それでも、この本は心に刻まれるのではないでしょうか。読んであげている大人も、その暖かで切ない世界に惹かれるに違いありません。これは誰の心の中にでもある、ほんのちょっとの欠片を映し出した大切な本です。
安房直子さんという作者は、もう亡くなっていますので、これ以上新しいお話が読めないのが残念です。

みどりのゆび モーリス・ドリュオン

小学校の図書室で何度もかりて、しまいに母親に買ってもらった本です。今読むと、子供が読むには言い回しが複雑です。しかし、それを飛び越えて心で感じるものがあったのでしょう。
誰でも自分の中にチトを持っています。自分が正しいと思うことと、世の中が正しいと思うことの相違。それに出会った時、子供達にこの本を読んで欲しいと思います。
ものの本質を見ることのできる、曇りのない目で。
挿絵の美しさと、美術的センス、細い線で描かれた絵が、想像をかき立てます。チトのように生きることができたらどんなに良いでしょう。今もそう思わずにいられません。

人形の家 ルーマー ゴッデン (著)

小学校の図書館で、私は何回もかりた本が2冊ありました。そのうちの1冊がこの「人形の家」です。
主人公に当たるトチーという名の木の人形の視点からのお話ですが、外国にはこんなに高級な素晴らしいドールハウスがあるのだと、憧れました。挿絵もぴったりとくる精密で繊細なもの、しかも暖かいタッチです。
自分の持ち物、おもちゃを大切にする気持ち。今の子供達にはあるのでしょうか。確かに、外国の工場で大量生産されて、おもちゃは安価に手にはいるようになりました。1つ1つ手で作られた大切なおもちゃを愛おしむ気持ち。家族(仲間)を愛する気持ち。感じて欲しいです。


火食鳥幻想 立原 えりか (著)

決して恵まれない環境の中で、平凡に生きていくことに疲れた時に読むと、体中頭中に染み渡ります。思うようにならない冷たい世間と、自分に満足のいかない日々。そんな中での正に夢のようなお話。
勇気をくれる本です。

あんず林のどろぼう 立原 えりか (著)

このお話はを始めに読んだのは。小さなお話を沢山集めた本の中の1つとしてでした。立原えりかさんという方は、どちらかと言えば甘口なのでしょうけれど、見えないけれどどこか越えてはいけない心の一線を描き出すことの上手な方だと思います。
これを読んだ後、何とも言えない優しい暖かな気持ちになりました。子供にも大人にも、きっと優しい気持ちをくれるに違いありません。


クリスマス人形のねがい ルーマー・ゴッデン (著)

寂しい思いをしながら生きて来た人達と一人のクリスマス人形が、一途な願いを心に秘めて過ごすクリスマス前の日。時に世の中は冷たくままならなくても、強く願えばきっと幸せがくるよ、と、温かな希望をくれるお話でした。元々この作家の他の本を私は小学校の図書館で何回もかりて、遂に母に買ってもらった覚えがあります。大人になってから出会ったこのお話も、しっとりと胸に残るものでした。絵も愛らしく素晴らしい!